- 本資料は、CSL社が 2025年12月7日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・再編集し、皆さまのご参考として提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、内容および解釈については英文が優先されます。原文(英語版)・原文(英語版)はCSL社公式ウェブサイトに掲載されていますので、ご参照ください(https://www.csl.com)。
- 本資料は、報道関係者を対象としています。医療現場や一般の方々を対象とした医学的な情報提供や、プロモーションが目的のものではありません。
- 54例中51例(94%)の患者が、HEMGENIX®の単回投与後、最長5年間にわたり継続的な定期補充療法の負担から解放され、持続的かつ臨床的に意義のある治療効果が示されました。
- 5年目においても、第IX因子の平均活性レベルは36.1%と高い水準を維持し、HEMGENIX®は良好な安全性プロファイルとともに、長期的かつ持続的な有効性を裏付けました。
- 8カ国において75名を超える患者が実臨床の現場でHEMGENIX®による治療を受けており、これは世界的な導入の拡大を反映しています。
米国ペンシルベニア州キング・オブ・プルシア/ドイツ、マールブルク(2025年12月7日)- グローバル・バイオテクノロジーのリーダーであるCSL(ASX:CSL)は本日、血友病Bの成人患者を対象としたピボタル第III相臨床試験「HOPE-B試験」における5年(60か月)時点の結果を発表しました。本結果により、HEMGENIX®(etranacogene dezaparvovec)単回投与の長期的かつ持続的な有効性および安全性が確認されました。
本データは、The New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されるとともに、米国血液学会(ASH)年次総会において同時に発表されました。本結果は、HEMGENIX®が長期にわたり安定した第IX因子活性レベルを維持し、従来の定期補充療法と比較して出血抑制効果を持続的に示すこと、さらに、定期補充療法から解放された状態が継続していることを改めて確認するものです。HEMGENIX®は、現在、AAV5中和抗体の有無にかかわらず、成人の血友病B患者に対して利用可能な唯一の遺伝子治療です。
「5年間のHOPE-B試験結果は、遺伝子治療における重要なマイルストーンとなるものです。HEMGENIX®が血友病Bの成人患者に対する治療を根本的に変える可能性を、明確かつ長期的なデータをもって示しました」と、ミシガン大学の小児科学・病理学教授で血友病・凝固障害プログラムおよび特殊凝固検査室のSteven Pipe医学博士は述べています。「頻回の静脈注射による定期補充療法に依存していた患者さんにとって、単回投与によって持続的な出血抑制が得られることは、日常生活の自由度を高め、継続的な治療負担が軽減された生活を送れる可能性を示唆しています。」
第III相、非盲検、単回投与、単群試験であるHOPE-B試験においては、既存のAAV5中和抗体の有無に関係なく、重症および中等症血友病Bを有する成人男性54例に対し、HEMGENIX®の単回投与が行われました。54例の参加者のうち、50例が5年間の追跡調査を完了しました。5年時点の追跡解析により、以下の結果が示されました:
- 第IX因子活性の持続性: 投与後1年目から5年目までの期間において、第IX因子活性の平均値は36%以上で維持されました。第IX因子の平均値は、1年目は41.5 IU/dL(n=50)、2年目は36.7 IU/dL(n=50)、3年目は38.6 IU/dL(n=48)、4年目は37.4 IU/dL(n=47)、5年目は36.1 IU/dL(n=48)でした。
- 持続的な出血予防効果:全出血の年間出血回数(ABR)の平均値は、導入期間(4.16、n=54)と比較して、投与後5年目(0.40、n=51)において約90%低下しました。さらに、関節内出血は導入期間から93%減少し(平均ABRは導入期間の2.34から5年目には0.16に低下)、自然出血は94%減少しました(平均ABRは導入期間の1.52に対し、5年時点では0.09)。
- 定期補充療法からの解放:患者さんの94%が、1回限りの遺伝子治療後、継続的な定期補充治療の必要がなくなりました。この割合は長期にわたり一貫して維持されており、投与後30カ月時点で継続的な第IX因子補充療法を再開した参加者は1名のみでした。
- 良好な安全性プロファイル:HEMGENIX®による治療に関連した重篤な有害事象は認められませんでした。HEMGENIX®の忍容性は概ね良好であり、治療関連有害事象(TRAE)は合計100件発生しましたが、その大半は投与後4カ月以内に発生したものです。4年目から5年目にかけて報告されたTRAEはわずか5件でした。最も多くみられた有害事象はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇で、9名(16.7%)の参加者が反応性副腎皮質ステロイドによる支持療法を平均81.4日間(標準偏差:28.6、範囲:51~130日間)受けました。
「HEMGENIX®が血友病Bの成人患者に対する1回限りの治療選択肢として、持続的な効果を示すことを裏付けるHOPE-B試験の5年間の結果を発表できたことを意義深く受け止めています。」と、CSLのシニアバイスプレジデント兼メディカルアフェアーズ部門責任者であるDeborah Long医学博士(FCCP)は述べています。「これらの結果は、HEMGENIX®がもたらす意義ある違いを明確に示すものです。HEMGENIX®により出血回数は定期補充療法と比較して減少し、患者さんは定期補充療法を継続する負担から解放されます。私たちは今後も、この重要な治療へのアクセス拡大に取り組んでまいります」。
HOPE-B試験の解析は5年データで終了しますが、同意した治験参加者はIX-TEND 222-3003延長追跡調査(NCT05962398)において引き続きモニタリングされ、治療後最長15年間にわたり経過観察が行われます。
複数年にわたるHEMGENIX®の臨床開発は、uniQure(Nasdaq:QURE)が主導して実施されました。その後、本治療の商品化に関する世界的権利のライセンスをCSLが取得したことに伴い、臨床試験のスポンサーシップは弊社へ移行しました。CSLはさらに長期的な安全性、有効性、および持続性に関する追加データを収集するため、市販後レジストリを構築しました。
HEMGENIX®は、米国、カナダ、英国、スイス、オーストラリア、サウジアラビア、台湾、韓国、シンガポール、香港において規制当局の承認を取得しているほか、欧州連合(EU)および欧州経済領域(EEA)については欧州委員会(EC)から条件付き販売承認を取得しています。これらの承認以降、2025年11月現在、8カ国で75名を超える患者さんが実臨床環境においてHEMGENIX®を投与されました。
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血友病Bについて
血友病Bは生命を脅かす希少疾患です。血友病Bの患者さんは、特に関節、筋肉、内臓に出血が起こりやすく、それによって痛みや腫れ、関節の損傷が生じます。1 絶えず出血への不安を抱えているので、階段の上り下りなどの単純な動作でさえ、日常生活が制限されることがあります。1-3 中等度から重度の血友病Bに対する現在の治療法には、低いレベルの血液凝固因子に対して第IX因子を一時的に置き換えたり補充したりする目的での、生涯にわたる第IX因子の定期補充療法などがあります。1 多くの血友病患者は、常に自身の病状管理に伴う精神的・感情的影響に直面しており、血友病への不安から解放された生活を送れることは、ほとんどありません。2
HEMGENIX®について
HEMGENIX®(etranacogene dezaparvovec)は生体内遺伝子治療であり、血友病B患者に欠損しているタンパク質である第IX因子を体内で持続的に産生できるようにすることで、対象となる血友病B患者における出血イベントの発生率を低減します。4 本剤はアデノ随伴ウイルス(AAV5)由来の非感染性ウイルスベクターを使用しています。4 AAV5ベクターは、肝臓の標的細胞に第IX因子のPadua遺伝子変異体を運搬し、活性が生体由来の第IX因子より約6.5倍高い第IX因子タンパク質を産生します。5 これらの遺伝子指令は標的細胞内に残存しますが、通常は患者のDNAに組み込まれることはありません。4 一度導入されると、新たな遺伝子指令により、細胞機構が安定したレベルの第IX因子を産生するようになります。6
ピボタル試験であるHOPE-B試験について
ピボタル第III相試験であるHOPE-B試験は、etranacogene dezaparvovecの安全性および有効性を評価する、進行中の国際共同、非盲検、単群試験です。7重症または中等度重症(FIX 活性 2% 以下) の血友病Bと診断され、定期的な第IX因子補充療法を必要とする成人血友病B患者54名を、6カ月以上の前向き観察期間に登録しました。この期間中、現在の標準治療を継続し、ベースラインの年間出血回数(ABR)を算出しました。7 6カ月の導入期間後、etranacogene dezaparvovecを2×1013 gc/kgの用量で患者さんに単回静脈内投与しました。AAV5に対する中和抗体(NAb)が既に存在する患者さんについては、本治験から除外しませんでした。7
第III相HOPE-B試験の結果は、etranacogene dezaparvovecの持続的な有効性と安全性を実証しただけでなく、単回投与による長期的な出血抑制効果によって、この治療法が血友病B患者に継続的なベネフィットをもたらすことも示しました。4,8,9
追加試験データ
CSL220(旧AMT-060)はetranacogene dezaparvovecと類似した構造を有しており、F9遺伝子における単一のアミノ酸置換のみが異なります。10 第I/II相試験において、重度/中等度に重度の血友病Bの成人患者を対象に、単回投与量の異なる2つのコホートでCSL220の持続性を評価しました。10 どちらのコホートも8年時点で第IX因子の平均活性は安定し(コホート1:n=3、8年目:4.9 IU/dL;コホート2:n=5、8年目:5.6 IU/dL)、平均ABRは8年目まで維持されました(コホート1:2.2;コホート2:1.0)。8年目において新たな安全性事象は認められず、継続的な第IX因子定期補充療法に復帰した患者さんはいません。10
血友病Bの成人患者(n=3)を対象とした第IIb相試験において、etranacogene dezaparvovecの単回投与後、平均aPTTに基づく第IX因子活性は1年目(40.7%)から5年目(46.7%)まで安定し、全出血における累積追跡期間(0~5年目)の平均ABRは0.14でした。5年間にわたり良好な安全性プロファイルが維持されました。11 対象患者数は限られているものの、これらのデータはetranacogene dezaparvovecの長期有効性に関するさらなるエビデンスを提供する可能性があります。10、11
【CSLについて】
CSL Limited(ASX:CSL、USOTC:CSLLY)は、血友病、免疫不全症候群の治療薬、インフルエンザ予防ワクチン、鉄欠乏症や腎臓病の治療薬など、生命を救う医薬品の豊富なポートフォリオを有するグローバル・バイオテクノロジー企業です。1916年の創業以来、最新のテクノロジーを活用して生命を救う、という約束を原動力に活動してきました。現在、3つの事業であるCSL Behring、CSL Seqirus、CSL Viforを含め、全体で社員29,000人を擁し、世界100ヵ国以上の患者さんの救命に寄与する製品をお届けしています。ビジネスにおける強み、研究開発への集中、卓越したオペレーショナル・エクセレンスを組み合わせた当社のユニークさが革新的製品の開発、そして提供へと繋がり、患者さんの充実した人生を支えています。
バイオテクノロジーの将来性に関する記事についてはCSLBehring.com/Vitaをご覧ください。
詳細はhttps://www.csl.com/をご覧ください。
【CSLベーリング株式会社について】
CSLベーリング株式会社は、生物学的製剤を専門とするグローバル・バイオテクノロジー企業として、重篤および希少疾患の治療・予防に用いられる革新的な製剤を、世界中の患者さんにお届けすることを使命としています。日本においては、免疫・希少疾患、HAE(遺伝性血管性浮腫)、血友病、救命救急・止血の各領域を主要分野とし、事業を展開しています。設立以来、着実に歩みを進め、2020年には20周年を迎えました。CSLベーリングはこれからも、日本の医療、そして患者さんとそのご家族の生活の質のさらなる向上に貢献してまいります。
詳細はhttps://www.cslbehring.co.jpをご覧ください。
References:
- Srivastava A, Santagostino E, Dougall A, et al. WFH Guidelines for the Management of Hemophilia, 3rd edition. Haemophilia 2020; 26 Suppl 6: 1-158.
- Krumb E, Hermans C. Living with a "hemophilia-free mind" - The new ambition of hemophilia care? Res Pract Thromb Haemost 2021; 5: e12567.
- Hermans C, Pierce GF. Towards achieving a haemophilia-free mind. Haemophilia 2023; 29: 951-953.
- Pipe SW, Leebeek FWG, Recht M, et al. Gene Therapy with Etranacogene Dezaparvovec for Hemophilia B. N Engl J Med 2023; 388: 706-718.
- Spronck EA, Liu YP, Lubelski J, et al. Enhanced Factor IX Activity following Administration of AAV5-R338L "Padua" Factor IX versus AAV5 WT Human Factor IX in NHPs. Mol Ther Methods Clin Dev 2019; 15: 221-231.
- Thornburg CD. Etranacogene dezaparvovec for hemophilia B gene therapy. Ther Adv Rare Dis 2021; 2: 26330040211058896.
- Pipe S, van der Valk P, Verhamme P, et al. Long-Term bleeding protection, sustained FIX activity, reduction of FIX consumption and safety of hemophilia B gene therapy: results from the HOPE-B Trial 3 years after administration of a single dose of etranacogene dezaparvovec in adult patients with severe or moderately severe hemophilia B. Blood 2023; 142: 1055.
- Leebeek FWG, von Drygalski A, et al. The phase 3 HOPE-B trial shows 4-year durability of sustained near-normal FIX activity, bleed protection and favourable safety in adults with severe or moderately severe haemophilia B. EAHAD 2025. EAHAD25-ABS-1255.
- Genezen MA, Inc. CSL Behring GmbH. Hemgenix® (etranacogene dezaparvovec): Summary of Product Characteristics [online]. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/hemgenix-epar-product-information_en.pdf [Last accessed: December 2025].
- Leebeek FWG, Meijer K, Coppens M, et al. Stable Factor IX Expression and Sustained Reductions in Factor IX Use 8 Years after Gene Therapy with CSL220 (Formerly AMT-060) in Adults with Hemophilia B. Blood 2024; 144: 3578-3578.
- von Drygalski A, Giermasz A, Gomez E, et al. OC 02.3 Etranacogene dezaparvovec hemophilia B gene therapy phase 2b trial final Results: stable and durable FIX level expression over 5 years. ISTH 2024 Oral Communication Abstracts. Research and Practice in Thrombosis and Haemostasis 2024; 8: 116.
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