ドイツ、マールブルグ – 2023年2月20日 – 世界をリードするバイオテクノロジー企業であるCSL(ASX:CSL)は本日、第IX因子インヒビター発現歴のない重度及び中等度の成人血友病B(先天性第IX因子欠乏症)を治療する初めての、1回限りの遺伝子治療であるHEMGENIX®(etranacogene dezaparvovec)が、欧州委員会により条件付き販売承認(CMA)されたと発表しました。現在実施中の臨床試験では、HEMGENIX®の単回投与により、血液凝固に重要なタンパク質である血液凝固第IX因子の設計図となる遺伝子を送達することで年間出血回数(ABR)が減少しました。1 本薬は欧州連合(EU)及び欧州経済地域(EEA)で初めて承認された、血友病Bの遺伝子治療薬です。
CSLの研究開発責任者兼CMOであるDr. Bill Mezzanotteは、「欧州におけるHEMGENIX®の承認は、偉大な科学の結晶といえるものであり、血友病Bの患者さんと治療を行う医療従事者の方々の双方にとって、治療パラダイムを変革しうる医薬品になると確信しています」と述べた上で、「HEMGENIX®及びuniQure社とのパートナーシップは、特に血友病Bのようによく知られている疾患で患者さんがベネフィットを得られる可能性を踏まえると、目覚ましい革新を追求、開発、提供するというCSLの約束を果たすものです」と述べています。
現在、血友病B患者は、十分なレベルの第IX因子を維持するために第IX因子製剤を静脈内投与する治療を生涯継続する必要があり、生活の質や福祉に重大な影響を及ぼすことがあります。2 欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)によると、頻回投与又は出血時の投与により患者に生じる負担を軽減しうる新たな治療法に対し、アンメット・メディカル・ニーズが存在しています。3
欧州委員会の決定は、血友病Bを対象とした遺伝子治療における過去最大規模のピボタル試験であるHOPE-B試験の結果に基づいて2022年12月に出されたCHMPの肯定的見解に従うものです。4,5 同試験の結果から、HEMGENIX®を投与した血友病B患者では、第IX因子の活性レベルが安定的かつ持続的に増加し(平均値:36.9%)、ABRが64%低下したことが示されました1。HEMGENIX®の投与後18ヵ月時点で、患者の96%が第IX因子の定期補充療法を中止しており、また観察期と比較して第IX因子製剤の使用量が平均で97%減少しました。1
また、HOPE-B試験の24ヵ月時点の解析結果により、HEMGENIX®の効果は持続的かつ永続的であることが示され ました。6 臨床試験では、この治療の忍容性は概ね良好であり、治療に関連する重篤な有害事象はみられていません5。
フランクフルト大学病院の包括的診療センター凝固疾患科長である Wolfgang Miesbach教授は「この承認は血友病B治療における重要な一歩です。筋肉や関節、内臓への出血によって衰弱している患者さんにとって、生涯にわたり第IX因子製剤を静脈内投与する負担を軽減しうるものとなります」と述べた上で、「HOPE-B試験の結果から、HEMGENIX®により十分な第IX因子活性が持続的に得られることで、血友病Bの患者さんは定期補充療法が不要となり、また出血の転帰や生活の質を改善する可能性が示されています」と述べています。
CSLベーリングのシニア・バイス・プレジデント兼ヨーロッパ・コマーシャル・オペレーションズ・ゼネラルマネージャーであるLutz Bonackerは「私たちCSLベーリングの使命は、『生命を救い、生活を改善する』というシンプルなものです。患者志向、革新、誠実、相互協力、優れた実践力という当社のコア・バリューを実践することで、この約束を果たします」と述べ、「欧州におけるHEMGENIX®の承認は、血友病Bの患者コミュニティに目を向けマイルストーンを達成した結果です。今後は、できるだけ多くの欧州の患者さんがこの革新的な治療法にアクセスできるように取り組む必要があります。当社はステークホルダーと協力して、これを達成することに全力を尽くします」と強調しています。
欧州委員会には、EU加盟国ならびにEEA諸国のアイスランド、ノルウェー及びリヒテンシュタインの医薬品を承認する権限があります。
何年にもわたりHEMGENIX®の臨床開発はuniQure社(Nasdaq:QURE)が主導してきましたが、その後CSLが本治療の製品化に関するグローバル・ライセンスを取得してHEMGENIX®の臨床試験のスポンサーとなりました。英国では現在、医薬品医療製品規制庁(MHRA)がCSLのHEMGENIX®の申請を審査中です。HEMGENIX®は2022年11月に米国食品医薬品局(FDA)により承認されました。
血友病Bについて
血友病Bは生命を脅かす希少疾患です。血友病B患者は特に関節、筋肉、内臓に出血しやすく、それによって痛みや腫れ、関節の損傷が生じます。中等度から重度の血友病B患者に対する現在の治療には、生涯にわたる第IX因子の定期補充療法から、低下した第IX因子を一時的に補う補充療法までを含みます。
HEMGENIX®について
HEMGENIX®はアデノ随伴ウイルス5型(AAV5)を用いた遺伝子治療であり、中等度から重度の血友病B患者に1回限りの治療として投与します。HEMGENIX®(別名CSL222、旧称AMT-061)は、AAV5と呼ばれる特定のAAVをベクターとして使用します。AAV5ベクターは、第IX因子の自然変異体であるPadua遺伝子(第IX因子-Padua)を搭載しており、活性が通常より5~8倍高い第IX因子タンパク質を産生します。
ピボタル試験であるHOPE-B試験について
ピボタル第III相試験であるHOPE-B試験は、HEMGENIX®の安全性及び有効性を評価する、国際共同、非盲検、単群試験であり、現在実施中です。中等度又は重度の血友病Bと診断され、予防的な第IX因子補充療法を必要とする成人血友病B患者54例を、6ヵ月間の前向き観察期に登録して現在の標準治療を継続し、ベースラインのABRを算出しました。この6ヵ月間の観察期後、HEMGENIX®を2×10^13 gc/kgの用量で患者に単回静脈内投与しました。本試験では、AAV5に対する中和抗体(NAb)を保有する患者は除外しませんでした。このピボタル試験では、54例にHEMGENIX®を単回投与し、53例が18ヵ月以上の追跡調査を完了しました。本試験の主要評価項目 は、第IX因子発現が安定した後の52週間と6ヵ月間の観察期とで比較したABRでした。この評価項目について、投与後7ヵ月から18ヵ月までABRを測定し、観察期が第IX因子導入遺伝子発現の定常状態となるようにしました。
ピボタル試験のHOPE-B試験の結果から、HEMGENIX®により投与後18ヵ月の時点で第IX因子活性36.9 IU/dL(平均値)であることが示されました。投与後24ヵ月時点の追跡調査では、第IX因子活性は36.7 IU/dLと安定していました。6ヵ月間の観察期に続く投与後7ヵ月目~18ヵ月目にわたり、全出血のABR(1.51)が64%低下し(p=0.0002)、第IX因子による治療が必要であった全出血が77%低下しました(3.65~0.83、p<0.0001)。投与後21日以降7~24ヵ月までで、HEMGENIX®を投与した54例中52例(96.3%)が、継続的な第IX因子の定期補充を必要としませんでした。第IX因子補充療法の使用量の平均値は、観察期に標準治療として使用された第IX因子定期補充療法と比較して、HEMGENIX®投与後7~24ヵ月の間に248,392.6 IU/人年の有意な減少を示しました(96.52%、片側p<0.0001)。
さらに解析したところ、ベースライン時のAAV5 NAbレベルと第IX因子活性との間に、臨床的に意味のある相関は認められませんでした。
CSLについて
CSL Limited(ASX:CSL、USOTC:CSLLY)は世界をリードするバイオテクノロジー企業です。インフルエンザワクチンに加え、血友病及び原発性免疫不全症候群の治療薬など、命を救う医薬品の多種多様な製品ポートフォリオを提供しています。1916年の創業以来、当社は最新のテクノロジーを活用して命を救う、という約束を原動力に活動してきました。現在、CSLは3つの事業であるCSL Behring、CSL Seqirus、CSL Viforを含め、全体で社員30,000人を擁し、世界100ヵ国以上の患者さんの救命に寄与する製品をお届けしています。ビジネスにおける強み、研究開発への集中、卓越したオペレーショナル・エクセレンスを組み合わせた当社のユニークさが革新的製品の実現、開発、そして提供へと繋がり、患者さんの充実した人生を支えています。バイオテクノロジーの将来性に関する記事については CSLBehring.com/Vitaをご覧ください。また、Twitter.com/CSLでフォローをお願いします。 詳細はwww.csl.comをご覧ください。
参照資料
1. Miesbach W et al. 第15回EAHAD学会口頭発表、2022年2月
2. Srivastava A et al. WFH Guidelines for the Management of Hemophilia, 3rd edition.(血友病の管理に関するWFHガイドライン第3版) Haemophilia 2020; 26(Suppl 6):1-158.
3. European Medicines Agency. First Gene therapy to treat haemophilia B(血友病B治療のための最初の遺伝子治療). https://www.ema.europa.eu/en/news/first-gene-therapy-treat-haemophilia-bから入手可能 [アクセス日:2023年2月]
4. European Medicines Agency. HEMGENIX Summary of Positive Opinion(HEMGENIXの肯定的意見の要約). https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/hemgenixから入手可能[アクセス日:2023年2月]
5. ClinicalTrials.gov. HOPE-B: Trial of AMT-061 in Severe or Moderately Severe Hemophilia B Patients(HOPE-B:重度又は中等度に重度の血友病B患者を対象としたAMT-061の試験)。https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03569891から入手可能[アクセス日:2023年2月]
6. Coppens et al.、2023年第16回EAHAD年次大会、最新の臨床試験結果セッション5、2023年2月
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